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「ちがっ、白井さんっ!!
これ、違いますっ!!」
わたしが突き返した
名刺を受け取って、
「あららら、どーもすみません。
間違えちゃいましたっ」
白井さんはおちゃめに笑いながら、
別の名刺入れを取り出した。
「フリーのライターなもんで、
色んな雑誌の名刺を
持ち歩いてるんですよ。
すみませんねー先生、驚かせて」
わたしは乱れた呼吸を
必死で整えながら、
椅子に腰を下ろした。
――ぜったい今、
わざとやった……っ。
精一杯の抗議の目線を
白井さんに向ける。
「こっちです、本業は」
今度こそ、わたしにくれたのと
同じ名刺を出したようだ。
それを見ても、先生の顔は
厳しく引き締まったままだった。
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