7人が本棚に入れています
本棚に追加
一週間前の雨の夜、俺はひとりの少女に出逢った。出逢った経緯は運命やら必然やら赤い糸やらとは全くもって関係ない、ただの偶然でありーーそもそも俺はそんな不確かなものを信じていないので、仮に神様が導いた出逢いだったとしてもただの偶然としか解釈が出来ない。
それは中学生だから、ひねくれているからとか、そんな俺個人を抽象するものからくる偏見等ではなくて、俺は産まれたときから目に見えるもの以外を信じることが出来なかった。
だから、可愛くない子供だったと自分でも思う。
実の両親に殴られて育てられたことに対して文句が言えないくらい、俺はおかしかったのだろう。
俺に殺人衝動が芽生えたのは小四の時だった。
いつも通り何の理由もなしに父親にぶん殴られ、母親からの心抉る罵倒を今よりもずっと非力で小さな身体と未発達な心に受けた俺は、頭のなかでぷちんと糸が切れるような音を聞いた。
今思えばそれは堪忍袋の緒が切れるというやつではなく、俺のなかにあった人間として大切な何かが壊れてしまった音なのかもしれない。ま、確かめる術はもうどこにも無いのだけれど。
俺は、その日、両親を殺した。何をどうしてどうやったのかは覚えていない。ぷちんという音を聞いた後、俺は色と感情が抜け落ちた世界で真っ赤に染まり立ち尽くしていた。涙は零れなかった。今まで感じていた悲しいとか痛いとか苦しいとか、そんな人間らしい感情すらも湧かなかった。
最初のコメントを投稿しよう!