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ただただ、無表情で無感情。
あえていえば、つい先程まで自分に殴る蹴るの暴行と罵倒を与えていたふたりが静かに横たわっていることに少しだけ違和感を抱いたくらいだった。
それだけだった。
そして、色々あって俺は警察に引き渡されることなく、今を過ごしている。
思い出したくもない記憶の蓋を抉じ開けているとズボンの尻ポケットに震動を感じた。ぶぶっという不規則なバイブ音が響き、携帯の電源を消すのを忘れていたと思いながら、手に取り、通話ボタンを押した。耳に当てると、聞き慣れた男の声。
「はい、もしもし?」
『ゼロか?』
低い声で呼ばれた名前は俺が新しく生きていくのに与えられたものだった。
「俺の携帯に掛けてきたんなら、出るのは間違いなく俺だろう?なーんの用だよ?こっちとら、中学生やっている最中だっつーのに、教師に見つかったら取り上げ&説教なんだぜ」
『それは悪いな、急用だった』
「急用?珍しいな、どーした?」
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