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答えながら俺は目を細める。
両親を殺した日、俺が殺人を犯した日。家を飛び出すことなく呆然と思考を放棄していた俺の前に現れたのは、電話越しの男だった。家のなかの惨劇を見た男はサングラス越しに瞳を見開いたぐらいで、極めてそれだけの反応しか取らなかったが、それでも真底驚いていることが分かった。
それから、なんやかんやで俺は男に身柄を保護されることとなり、俺の殺人を無かったように隠蔽して、俺の戸籍を破棄して、新しい名前と新しい生活と新しい人生と新しい戸籍を俺は男から与えられた。
後になって聞いたところ男は裏世界の住人だった。殺人鬼が集まって出来た組織ーー《無音》に属している彼の力によれば、俺ひとりが起こした事件を隠蔽するくらい容易い、と自慢気に呟いていた幼女がいたなぁとか思い出す。
目を閉じる。
両親を殺した俺を彼は組織に招き入れた。これも後になって知った話だが、彼が俺の家に訪れた理由は両親を殺す為だったらしい。
外面だけは良かった俺の両親は、実は金銭面に関してはかなりルーズで、色んな機関から借金の返済に迫られていたそうだ。しかし、両親に返済能力は無く、業を煮やした金融機関が男に殺害の依頼をした。
大方、両親の死体は金にする為にどっかに売り払われたのだろう。いい気味だ、と思う。
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