殺人者しか殺さない殺人鬼の少年の話。

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『あの女が原因か?』 言われて言葉に詰まる。 違う、とは何故か言い切れなかった。 少女が最後に見せた笑みが浮かび上がる。 綺麗な笑顔だった。生まれて初めて綺麗だと思った。 内側から溢れる強い決意に反して柔らかな笑み。 少女は俺と同じだった。 少女がこの世を去った後、迎えた朝で世間は騒いだ。 路地で横たわっていたふたりの男女の死因は報道メディアで情報として発信され、別れ話の縺れか? 通り魔か? とか様々な憶測が飛び回っていたが、一週間経った今では何事も無かったように世間は平静を保っている。 悲劇や惨劇は人間の手によって作り出されるのに、悲劇や惨劇は人間の手によって作り出せるからこそ、人間の心によって消費され消去されるんだ。 「くかかか、違うよ。俺は俺だ。他人のことなんて気にしないし、気にもなんねぇ。でも、まぁ、あのおねーさんは惜しかったぜ。もし生きていたら、俺が止めてやれば、狂ってる者同士、仲良くやれたかもしんねーのによ」 『何故、捨てたはずの名前を教えた?』
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