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両親は、僕の方を褒めてくれた。
君はいわゆる不良で、それもリーダーだから。
でも、別に両親はそんな君を嫌ってはい。
陸斗はそう言う人だ。
だから、あの人が君の事を好きだと言っていた事に疑問を感じることはなかった。
それが男同士であっても。
それくらい、陸斗は魅力的だし……
「もう学園の車が来てるんだよ。いつまでも待たせてちゃ失礼だ。連絡はいつでもできるから。まぁ、陸斗には迷惑かけちゃうけど……」
「俺は全然大丈夫だ…宙がそれで幸せになれるなら全力で応援するのが、兄である俺の役目なんだぜ?」
「兄って……たった数分の違いじゃないか」
「それでも、俺が兄には変わりないだろ? 俺は大好きな弟の幸せをかなえてやれない程、できそこないの兄じゃない」
絶対に追いつくことが出来ない。
その優しさに甘えて、僕は僕の願いを叶える。
「陸斗…ありがとう。―― 美琴さんによろしく言っておいてね。なにかあったら、すぐに連絡するから」
心配そうな陸斗の視線を振り切る。
そのまま出て行こうとすると、グッと腕が引かれた。
「ちょっと待て!」
「え、……んっ」
柔らかいものが、僕の唇に触れた。
「……ッ」
ヌルッと唇を辿った舌に、僕は陸斗の体を押し返す。
キスはたまにされるけど、深い方はやっぱり慣れない。
「……いってらっしゃい」
陸斗の目が一瞬だけ怖かった。
とても暗い中に、少しだけ鋭く光った気がして、背中に寒気が伝う。
「……行ってきます。陸斗も気を付けてね」
もう一度顔を見ることが出来なかった僕は、そう言っても大きな荷物と共に、玄関を飛び出した。
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