ままにならぬが浮世の常

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すぐに紛れて見えなくなっても、無意味にそちらへ目線を向けたまま。 親指を、唇に挟んで舐めた。 「いいよ、行く」 「お前も不憫だな。どこがいいの?あんな毒にも薬にもならなそうな、いかにも草食系」 視界の外で、間宮が可笑しそうに笑うのがわかる。 「どこって」 ごくん、と口の中のものを飲み込んで、ホットコーヒーをすすった。 「私が肉食だから?」 「……肉食、ねぇ」 男がハンバーガーを見て鼻で笑った。 こっちの肉食の間違いじゃね? とでも言いたげな、男の小馬鹿にした態度は置いといて。 目の前のこの男よりは、ずっといい。
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