ままにならぬが浮世の常

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ぞくり。 と、背中を冷気が走ったように感じて、身震いした。 「いや、ごめん。こっち灰皿いっぱいになっちゃってさ」 そう言って私と矢野さんを交互に見た、彼の笑顔は目だけ酷く冷ややかだった。 ホンの一瞬の、こと。 ――― 気のせい、かな? 頬がひきつるのを抑えながら、二の腕に未だ残る鳥肌を軽く手のひらで摩った。 「なんだ。俺が倉本の頭撫でようとしたから、邪魔したんだろ」 「あ、バレました?課長ずるいですよ、相田さん落としておきながら」 目の前で繰り広げられる茶番劇に、もう先ほどの冷気は漂っておらずやはり私の気のせいだったのかもしれない。 「もう、二人共冗談ばっかり言ってからかわないでくださいよ」 「冗談でもないんだけどな」
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