奇跡の数

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もぐもぐと口を動かしながら、彼女は驚きの発言をした。 今日のメニューはカツ丼だ。 「普段とのギャップ。時々見える子供っぽい表情とか」 「え……モテるの?谷センセ」 「モテるよー。公認の彼女がいるから皆おとなしいけど。外来は主婦がほとんどだからそうでもないけど、病棟の看護婦さんなんかはねー」 最後の方は少し周囲を伺いながら声を落として、一旦言葉を切ると、向かいに座る私に顔を寄せて、小声で言った。 「隙さえあれば、一緒に飲みに行きたい、とか。機会狙ってる人、いるよ」 その噂の信憑性とか。 色々ツッコミどころはあるが。 一番オカシイのは、既婚者である谷先生に、院内で公認と言われる彼女がいることだ。 皆、感覚が麻痺してる気がする。 気のせい?私が、世間知らずなのか? よくわからなくなってきた。 「検査の腕は確かにすごいしさ。他のセンセが入れるの苦労してる患者さんとかするって入れるとかっこいーとか思うけど………  それ以外、ふつーのオジさんなのになー。しかも結婚してるのに、彼女がいるような人だよ?わかんないわー」 「少し悪い男の方が、素敵に見えるもんなんだよ」 そうなのか。 やっぱりよくわからない。
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