奇跡の数

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「いい子だねー」 「いい子にしてたらサンタ来る?」 「きっとねー」 ――― あぁあー…なんでこの子はこんなに聞き分け良いんだろう。 クリスマスイブの日は…平日だから仕事だけど、ケーキを買ってマコトの好きなものだけたくさん作ったげよう。 ずきずきと痛む胸を抑えつつ。 でも、今までまともに飲み会や歓送迎会すら出られなかったから。 別にふぐじゃなくても良い。 とても、楽しみだった。 そうして迎えた、「ふぐの日」 放射線科の看護婦、もちろん全員参加、先生含め9名。 「わー…、ふぐだ……?」 テレビでしか見たことないが、間違いないこれは「てっさ」だ。 絵皿が透けて見えるほどに薄く切られた刺身が、花を咲かせている。 こじんまりとした、高齢のご夫婦がやっているらしい小料理屋の奥座敷。 先生が用意してくれたのは、ふぐづくしのお料理だった。 テーブルいっぱいに並べられたてっさの皿と、お鍋。ふぐのからあげ。 後から、白子とかヒレ酒も来るらしい。 一番上座に先生が座り、私は「筧さんが一番若いから!」と、お酌をするよう看護婦さんたちに命じられて隣に座った。 みんなずるい。先生のご機嫌取りせずに楽しみたいからって。
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