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先生が、盃を呷る。
意味不明だがとりあえずイマイチらしいので、ご機嫌取りにお酌をしようと徳利を掲げた。
「言われたこともできないし、わからなければ聞けばいいのにじっとしたままで、誰でもできるような掃除だけしとけばいいと思ってただろう」
差し出された空の盃に、徳利を傾けながら。
あ、仕事の話だったか、と肩を竦めて「すみません」と唇を尖らせた。
だって、雑用すればいいって外来の師長さんに言われて行ったんだもの。
第一、専門用語も何もわからない、医療を勉強したこともない私にいきなり検査室の仕事なんて。
何を聞けばいいかもわからないのに、掃除以外に何が出来る。
無茶を言うなって話だ。
「でも、やっと君もできるようになった。今なら、内視鏡の仕事なら安心して任せられる」
「……え…と。ありがとうございます」
急に褒められて面食らう。
先生の顔を見ると、私の方は見ていなくて、いつもと同じ横向きの顔。
の、リラックスバージョン。
「今の君だったら、看護婦居なくても君がいれば何も問題無い」
「いえ、そんなわけにはいかないですよ、注射できないですし…」
「注射は僕もできるから看護婦じゃなくてもいい。でも検査のサポートは君が一番だ」
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