298人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
「笑えって?」
「何しても最後は笑ってろっていうんです。散々人を罵って怒鳴り散らした後でも、笑えって。これって人格無視してますよね」
「まったくだ」
「笑わないと余計長引くので笑いましたけどね!」
「なんで結婚したの?」
「は?」
「いや、しかも結構長く。もっと早く別れればよかったのに」
空になったグラスに、またビールが注がれる。
私はアルコールが回って思考の回らない、役立たずの頭をくらりと揺らす。
「それは」
「うん」
「………初めて好きになった人だったので。見捨てるのも、なかなか」
酒って怖い。
普段なら絶対しない明け透けなことも言えてしまう。
「また特殊なのに掴まったなー」
「特殊ですか」
「うん、心配しなくても世の中もっと普通の男たくさんいるから」
「もぉ――、今、そういう泣かせること言わないでくださいよ」
「例えば僕とか」
「愛人作る人とか無理です」
……ほんと怖い。
いつもなら絶対言えない、って頭の片隅で理性の欠片が呆れてる。
「あー…それを言われると僕も耳が痛い」
先生がふざけた仕草で自分の耳を塞いだ。
最初のコメントを投稿しよう!