奇跡の数

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ここの内視鏡室は、午前中は胃カメラがほとんど。 午後からは、大腸内視鏡が主で、それ以外の検査が入ることもある。 さっきみたいに、生検という検査に使われることもあるし件数は少ないけれど乳管内視鏡、気管支内視鏡など。 内視鏡、と名がついても検査に使う機械も器具も全然違う。 準備や術後のメンテナンスも様々だ。 だから、ここの仕事は看護師や医師とはまた違った知識が必要で、その他のことは全く知らなくても、5年勤めて内視鏡のことのみに特化した私は、意外に重宝されていた。 看護士も一応1人は必要な為、放射線科から一日1人、当番制で来てくれる。 今日の当番は、玉岡さん。 先生がゴリ押しでいれた生検のおかげで、以降の検査は30分遅れどころか1時間遅れから始まった。 当然、業務終了も後ろへ引っ張られるわけで。 いつもより1時間以上遅い時間に、後片付けをすることになった。 私は今、内視鏡室の奥の流しで、使用した器具の洗浄と滅菌の準備をしていて真後ろにあるデスクで、谷先生が最後の患者さんのカルテを記入している。 お互い背中越しの状態。 流しの水を一旦止めたタイミングで、不意に声をかけられた。 「筧さん、ふぐ好きか」
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