奇跡の数

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その時に、初めて気がついた。 私はもう、旦那が好きじゃない、寧ろキライなんだ。 自分の感情なのに、目からウロコといった感じで急に自分の中身がクリアに見えた気がした。 結局、その後数ヶ月の紆余曲折を経て、先月プチンとキレた私は子供を連れて家を出て、戻らなかった。 自分の感情に正直になれたのは、玉岡さんがくれたきっかけのおかげだと思っている。 酷かった人見知りも彼女の人と接する姿に影響され、内視鏡に出入りする医師や看護師の人たちとは随分普通に話せるようになった。 だから、私は彼女に並々ならぬ恩がある。 「玉岡さんに、色々と相談にのってもらっていたので」 細かい状況を、谷先生に説明する意味もないので簡単に、そう言った。 何が、そんなに楽しいのだろう。 谷先生は終始にこにことして、私のセリフを聞くと何か思いついたように目を張った。 「そうだ、だったら玉岡さんも誘おう。3人で、ふぐ。それならいいだろ」 「えぇ?」 「玉岡さん!奢るから今度ふぐ食べに行かないか」 先生は私の返事などろくすっぽ聞かず、少し声を大きくして内視鏡室の入口付近で床拭きをしてくれていた玉岡さんに、声をかけた。
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