ありがとう

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青年はベンチを眺めていた 「君とは色々なことがあったね 君は僕を引きこもりから出してくれた 自殺しようとした僕を止めてくれた 泣いている僕を励ましてくれた 僕に勇気を与えてくれた 僕に被せられた罪を僕と一緒にみんなに否定してくれた 僕を今まで支えてくれた みんなと僕の仲を取り戻してくれた 君と僕はお互いに支え合い愛し合った 僕が仕事で辛いときも 君はいつも笑顔で励ましてくれたね 僕がうつ病になった時も ずっと傍に居てくれたね そして君はそんな僕にガンがあることを教えてくれた そして子どもが出来ていることも教えてくれた 僕は泣いていたけど君は笑顔だったね 必死にガンと戦っていたけど 結局、君は…… けど君は最後まで笑顔だった 君は命よりも大切な子を僕に託してくれた 君はその時泣いていたね 僕はそんな君を励ました そして電子音の音がなくなって 君が死んだとき 笑顔だったね 今、君と出会ったあの日を思い出している 君の子は今は五歳になっているよ」 「パパぁ どうしたの?早く遊ぼうよ~」 「こらこら分かったから ブランコで遊ぼうか♪」 この雪が積もったベンチを見ると、あの頃を思い出す ――――ありがとう――――
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