29691人が本棚に入れています
本棚に追加
/475ページ
「…あっ!ご、ごめんねあくまで今のはアタシの主観だから…」
「いや、いいけど…ウタにも、弟がいるのか?」
「うん、…でも、正直、あまり仲は良くないんだ」
エヘヘっ、と笑ながら言う。
少しさみしそうな笑いだったが。
ティアの話によると、ウタの家はかなり由緒ある名門だということ。
代々、当主には強い魔法力が宿る。
そのうち逆に強い魔法力が宿る人間こそ当主にふさわしい、と考えられるようになったらしい。
その家でウタは生まれた。
強い魔法力を持って生まれたウタだったがしかし、ウタは女だった。
代々その家を継いでいた強い魔法力を持つ当主は全員男だったのだ。
この世界では女性が家を継ぐという思想が未だない。
前代未聞の存在であるウタはしかし、歴代の当主を全員超えるほどの力を持っていた。
あまりにも惜しい存在、これは前例のない女当主が作られるか、と考えられた矢先
現当主の妻、つまりウタの母親のお腹にもう一人の子が宿っていることが分かった。
しかも待ち望んでいた男の子、ウタという前例もあり、否が応でも高まる期待だった。
だがしかし、
「その…才能がなかった訳じゃないんだよ?ただ、その…」
そう、才能がないわけではなかった、むしろ一般的に考えればある方だったのだろう。
しかし、ウタと比較してしまうと霞んでしまうのだった。
最初のコメントを投稿しよう!