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「葉風君…」「…」「師匠……。」
ああ、変な同情をさせちまった。
「いや、すまん。まあ、今はウタの話に思ったことを言おうとしたんだ。」
「私の…?」
「ああ、まあ、ある理由があって弟と気まずくなったんだ。それから少しあってさ、まあ…なんていうか俺は兄としてやっちゃいけないことをした。」
「兄として、やっちゃいけないこと?」
「うん、まあなんていうかな…。俺は、わざと弟の目の前で負けたんだ。」
「わざと…」
「うん、まあ、弟からすると、俺は人間じゃない、て思われてるんだ。」
「「「うん、それは私も(俺も)思ってる。」」」
「…………まあ、俺もあんまりそう思われて変な期待とかされるのは嫌だった。だから…俺もちゃんと人間なんだって教えるために、俺にも出来ないことはあるんだって、教えてやろうと思ったんだ。でも…」
『ふざけんな!何簡単に負けてんだよ!しかもわざとだろ!?』
『いや、俺は…』
『わかんねえと思ってんのか!?舐めんな!これでもあんたの弟だぞ!』
それからさんざん喚かれて、最後
『あんたにとってはどうでもよかったことかもしれない…けど…けど!そんな簡単に負けてもいい存在だったのかよ!?俺は!』
当然だ、弟は常に俺と比べられていて、いつも俺が勝つ、というのが普通だった。
そんな俺が、弟に勝つ俺が、そんな簡単に負けてしまっては、弟の立つ瀬がない、と言うものだった。
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