時の始まり

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時の始まり

「大きくなったら結婚しようね」 「うん、僕にはエルナしか居ないから!」 幼い恋人達は約束する 二人は二人の永遠を信じていた しかし、その希望は二日後に綺麗に崩れ去ることになる 「マルク、大事なことだからよく聞いてくれ。父さんの仕事の都合で引っ越さないといけなくなった お前も、母さんも一緒にだ 辛いだろうが、分かってくれるな?」 「エルナは?エルナとはもう会えないの?」 いきなり父親の都合を押し付けられた少年は、思考が固まった。 そんな中、一番に考えたのはエルナのことだった 「マルク、すまないがエルナともちょっとの間は会えなくなるだろう」 マルクの父親は申し訳なさそうに言う 「そんな……」 マルクの父親の仕事の都合による引越しは、あっけなく決まってしまった その後、挨拶だけして直ぐに家を出るだけの時間しかなかった 「エルナ、僕は引っ越すことになった」 エルナに対して、このことはあまりにも急だった 「冗談でしょ?マルク」 もしかしたらマルクが嘘を言ってるのかもしれないとまで思った 「冗談じゃないんだ エルナ、僕は絶対戻ってくる だから、それまで待ってて」 マルクは寂しそうに、しかし強い目でそう言った 「うん、待ってる。待ってるよマルク……」 エルナはその眼差しに何も言えなくなってしまった そのままマルクは行ってしまった 幼いエルナには、どれくらい会えなくなるのかをきちんと理解出来ていなかった これから10年会えないことなど、予想もしていなかった
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