1472人が本棚に入れています
本棚に追加
「……なんて、訳にはいかない、か」
諦めを含む溜息を吐きながら、神谷さんは笑った。
さっきまで感じていた恐ろしさよりも、今は神谷さんの顔に浮かぶ悲しみの方が辛かった。
「……ごめんなさい」
「羽村さんが謝ることじゃないよ、僕が……駄目なだけで」
つい口から出た謝罪の言葉に、神谷さんは頭を振る。
まるで自分を馬鹿にしているような口ぶりだ。
駄目だなんて、そんなことありえない。
神谷さんはとても、素敵な人だから。
俯いたままの神谷さんをどうにか励ましたくて、私は慌てて否定する。
「神谷さんは素敵です! 私がこうやって一緒にいられること自体、不思議なくらいで……駄目だなんて、そんなこと、ありません」
焦っているからだろうか、上手く喋れていない気がした。
そんな私に、背の高い神谷さんの声が落ちてくる。
.
最初のコメントを投稿しよう!