【第29話】決定打

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  翌日、長瀬は朝から随分忙しそうだった。 この間の撮影からずっと、そうなんだけれど。 私の方は、どちらかというと緩やかで。 今日の分の仕事は比較的、早く終わった。 午後七時前、そろそろ帰ろうかと思っていたら、三浦さんに声をかけられる。 「羽村さん、ごめん。今大丈夫?」 「あ、はい」 「この間のK社のデータ、いま出力できる?」 「大丈夫です。何部必要ですか?」 「んー、三部。お願い」 「はい」 頷いて、データを探して開く。 作業をしている私の横で、三浦さんが溜息を吐いた。 「二部は鳳凰堂に送る分なのよ。小野さんがクライアントに頼まれたんだって」 「あー……鳳凰堂、まだプリンタ替えてないんですね」 「そうなの。いい加減、買い替えろって話よね」 このところ、三浦さんも忙しい日々を送っているのは知っていた。 隣で首を左右に倒してストレッチをしている三浦さんに、私は提案する。 .
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