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「でも、これが僕だ。……羽村さんのことが好きな、僕だ」
「……っ」
私は、凍り付いたように動けなくなっていた。
呼吸もままならないほど、空気が薄く凍り付いたように感じる。
「僕は紳士でも何でもない。……ただの、男だよ」
その言葉を最後まで聞き終えた途端、ぐっとその腕に力が込められた。
顎から離れた手が伸びてきて、逸らしていた首が、後頭部が、瞬時に捕獲される。
そして、私がそれを認識するより早く。
私の唇は、神谷さんに奪われようとしていた。
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