【第29話】決定打

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  「でも、これが僕だ。……羽村さんのことが好きな、僕だ」 「……っ」 私は、凍り付いたように動けなくなっていた。 呼吸もままならないほど、空気が薄く凍り付いたように感じる。 「僕は紳士でも何でもない。……ただの、男だよ」 その言葉を最後まで聞き終えた途端、ぐっとその腕に力が込められた。 顎から離れた手が伸びてきて、逸らしていた首が、後頭部が、瞬時に捕獲される。 そして、私がそれを認識するより早く。 私の唇は、神谷さんに奪われようとしていた。 .
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