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「怖がらせてごめんね。困らせるようなことはしないと言っておいて……駄目だね、僕は」
「いえっ、それは私が……!」
「羽村さんは悪くないよ。飲み友達として傍に置いてくれと言ったのもそうだけど、今日だって僕が無理に誘ったんだから」
その言葉に、私は受け取った鞄をぎゅっと握りしめた。
どこまで優しい人なんだろう。
駄目だなんてそんなことない。
けれど今、その台詞をもう一度言うことは出来ない。
私が言っちゃ、駄目なんだ。
神谷さんを選ばなかった私が言ったって、何の説得力もない。
神谷さんはその大きな手でかりかりと頭を掻いて、まいった、とでもいうかのように呟いた。
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