【第29話】決定打

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  「怖がらせてごめんね。困らせるようなことはしないと言っておいて……駄目だね、僕は」 「いえっ、それは私が……!」 「羽村さんは悪くないよ。飲み友達として傍に置いてくれと言ったのもそうだけど、今日だって僕が無理に誘ったんだから」 その言葉に、私は受け取った鞄をぎゅっと握りしめた。 どこまで優しい人なんだろう。 駄目だなんてそんなことない。 けれど今、その台詞をもう一度言うことは出来ない。 私が言っちゃ、駄目なんだ。 神谷さんを選ばなかった私が言ったって、何の説得力もない。 神谷さんはその大きな手でかりかりと頭を掻いて、まいった、とでもいうかのように呟いた。 .
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