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「もし良かったら、私が届けてきましょうか?」
「え? いいの?」
「はい。今日はもう終わりなので、そのまま直帰します」
「そう? 助かるわ、じゃあよろしくね」
「はい」
鳳凰堂へ行くのは、そんなに手間じゃない。
長瀬の様子を見る限り、私の家に来るのはまだまだ後になりそうだし。
何かをして、気を紛らわせていたかった。
鳳凰堂に到着した私が出力したデータを手に小野さんを待っているとき、長瀬からメールが入った。
『遅くなるから先に飯食ってて。また連絡する』
私は『了解。頑張ってね』とだけ返信して、携帯を閉じる。
すぐにやって来た小野さんにデータを手渡し、説明を手短に済ませて、任務は完了。
鳳凰堂を出て、ひとつ、伸びをする。
「さーて、と」
スーパーにでも寄って、帰るとするか。
そう思っていた矢先、肩をポン、と軽く叩かれた。
驚いて振り返ると、そこにはにっこり微笑む神谷さんの姿。
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