【第29話】決定打

3/38
前へ
/38ページ
次へ
  「もし良かったら、私が届けてきましょうか?」 「え? いいの?」 「はい。今日はもう終わりなので、そのまま直帰します」 「そう? 助かるわ、じゃあよろしくね」 「はい」 鳳凰堂へ行くのは、そんなに手間じゃない。 長瀬の様子を見る限り、私の家に来るのはまだまだ後になりそうだし。 何かをして、気を紛らわせていたかった。 鳳凰堂に到着した私が出力したデータを手に小野さんを待っているとき、長瀬からメールが入った。 『遅くなるから先に飯食ってて。また連絡する』 私は『了解。頑張ってね』とだけ返信して、携帯を閉じる。 すぐにやって来た小野さんにデータを手渡し、説明を手短に済ませて、任務は完了。 鳳凰堂を出て、ひとつ、伸びをする。 「さーて、と」 スーパーにでも寄って、帰るとするか。 そう思っていた矢先、肩をポン、と軽く叩かれた。 驚いて振り返ると、そこにはにっこり微笑む神谷さんの姿。 .
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1468人が本棚に入れています
本棚に追加