1471人が本棚に入れています
本棚に追加
「自分でも、どうしてこんなことしたのか、上手く説明できないな……。羽村さんが言った通り、今日の僕は変だね」
「……」
独り言みたいな神谷さんの言葉に、何の反応も出来なかった。
目を逸らしていた神谷さんが、私と目を合わせた瞬間。
その顔に浮かんでいた、笑みが、消えた。
「ただ……長瀬さんのことを考えている羽村さんがあまりに可愛くて、……その分、悔しくて、ね」
そこまで言うと、一瞬だけ目を伏せる。
「最後の悪あがき、ってやつかな。本当にごめん」
「いえ……」
首を振った私が正面から見つめた神谷さんの表情は、いつも通りの、柔らかさと微笑みが戻っていた。
張りつめていた空気が、緩む。
神谷さんには、周りを優しく包む力が備わっているのかもしれない、と思った。
.
最初のコメントを投稿しよう!