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「む、無理です! だってそんなの……」
「言えるはずだよ、羽村さんなら。だって、きちんとNOは言えるじゃない」
弾かれるように反論した私の言葉尻を、するっとさらう神谷さん。
ぐ、っと言葉を失った私に、彼はさらに続ける。
「何が躊躇させているのかわからないけど……怖がったって何も進まないとは思わない? それとも君が好きになった男は、君の好意をきちんと受け止めてくれないほど、心の狭いヤツなのかな?」
「で、でも……」
疑問系で詰め寄ってくる神谷さんに、私はじりじりと追い詰められているような錯覚を起こす。
上手い反撃が思いつかずにただ唇を噛み締めるしかない。
「じゃあ……もし、長瀬さんが他の誰かに獲られても、平気?」
「っ!」
笑顔を絶やさない神谷さんが私にとどめを刺した。
平気、なわけがない。
耐えられる気がしない。絶対無理だってわかってる。
それでも私は必死に守ってきた建前で、なけなしの反撃を試みる。
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