【第29話】決定打

37/38
前へ
/38ページ
次へ
  「じゃ、もし駄目だったら、僕にするっていうのはどう?」 「……そんな失礼なこと、しません」 「やっぱり駄目か。残念だな」 私の返答に神谷さんが舌を出す。 そのお茶目な振る舞いに、思わず私は笑ってしまう。 しばらく私が笑うのを満足そうに見ていた神谷さんが、「さて」と場を取りまとめた。 「引き止めてごめんね。ここでさよならしようか」 「……はい。いろいろと、ありがとうございました」 「こちらこそ」 そう言った神谷さんが、すっと手を差し出してきた。 一瞬だけ躊躇したけれど、私はそれに応えた。 軽く短い握手を交わして、そっと手を離す。 神谷さんが微笑みながら、言葉を継いだ。 .
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1472人が本棚に入れています
本棚に追加