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「じゃ、もし駄目だったら、僕にするっていうのはどう?」
「……そんな失礼なこと、しません」
「やっぱり駄目か。残念だな」
私の返答に神谷さんが舌を出す。
そのお茶目な振る舞いに、思わず私は笑ってしまう。
しばらく私が笑うのを満足そうに見ていた神谷さんが、「さて」と場を取りまとめた。
「引き止めてごめんね。ここでさよならしようか」
「……はい。いろいろと、ありがとうございました」
「こちらこそ」
そう言った神谷さんが、すっと手を差し出してきた。
一瞬だけ躊躇したけれど、私はそれに応えた。
軽く短い握手を交わして、そっと手を離す。
神谷さんが微笑みながら、言葉を継いだ。
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