【第29話】決定打

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  「まあ……そうは言っても、また仕事で会うんだけどね。そのときは、どうぞよろしく」 「こちらこそ、よろしくお願いします」 「じゃあね。気をつけて」 「はい。失礼します」 「さよなら」 さよなら。 その言葉の持つ意味は、聞かなくてもわかった。 わざとそういう言い方をした理由にも、気付いていた。 一度、まっすぐお互いを見た。 私にも神谷さんにも、口元には、小さな笑みが浮かんでいる。 私は頭を下げて、踵を返した。 振り返らない。 立ち止まらない。 こみ上げてくる気持ちを何と表現したらいいんだろう。 してもし切れない程の感謝と、それから、過去の憧れとの決別、とでも言えばいいだろうか。 神谷さんが押してくれた背中を、無駄には出来ない。 私の足は自然と、スピードを上げていた。 .
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