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「人は、自分のことには鈍いものだからね」
「え?」
「まあ、僕にとっては好都合なんだけど」
「あの、神谷さん……?」
何をおっしゃっているのか、よくわかりません。
そう感じたことがそのまま顔に出ていたんだろう。
苦笑した神谷さんが、私の眉間をとん、と突いた。
「シワ、寄ってるよ?」
「っ、すみません……」
「謝ることじゃないけど、ね」
そう言って、箸を取る。
私も同じように、食事を進めた。
神谷さんとの会話や食事をしながらも、私は携帯が気になって仕方なかった。
長瀬との時間が、もうそこまで、迫ってきている。
早く会いたいような、でも顔を合わせるのが怖いような、そんな気分。
矛盾しているのはわかっていても、それが晴れることはなさそうだった。
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