【第29話】決定打

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  「人は、自分のことには鈍いものだからね」 「え?」 「まあ、僕にとっては好都合なんだけど」 「あの、神谷さん……?」 何をおっしゃっているのか、よくわかりません。 そう感じたことがそのまま顔に出ていたんだろう。 苦笑した神谷さんが、私の眉間をとん、と突いた。 「シワ、寄ってるよ?」 「っ、すみません……」 「謝ることじゃないけど、ね」 そう言って、箸を取る。 私も同じように、食事を進めた。 神谷さんとの会話や食事をしながらも、私は携帯が気になって仕方なかった。 長瀬との時間が、もうそこまで、迫ってきている。 早く会いたいような、でも顔を合わせるのが怖いような、そんな気分。 矛盾しているのはわかっていても、それが晴れることはなさそうだった。 .
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