【第29話】決定打

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  本当に一杯だけ飲み終えると、私たちは店を出た。 店にいたのはわずか数十分くらいのものだろう。 そっと携帯を開く。 長瀬からの連絡は、まだ、ない。 「家まで送るよ」 そう言ってくれた神谷さんの申し出に首を振った。 「いえ、大丈夫です。まだ早いですし」 「そう? でも、もう少し話したい気分なんだけどな」 「すみません、もうそろそろ約束の時間なので」 苦笑いを返しながら断る私に、神谷さんは「うーん」と唸った。 何だか昨日から、神谷さんの雰囲気が違うように思う。 違和感……とでも言えばいいんだろうか。 いつも私の都合を気にかけてくれていた神谷さんが、今日に限って、妙に強引に思える。 .
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