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本当に一杯だけ飲み終えると、私たちは店を出た。
店にいたのはわずか数十分くらいのものだろう。
そっと携帯を開く。
長瀬からの連絡は、まだ、ない。
「家まで送るよ」
そう言ってくれた神谷さんの申し出に首を振った。
「いえ、大丈夫です。まだ早いですし」
「そう? でも、もう少し話したい気分なんだけどな」
「すみません、もうそろそろ約束の時間なので」
苦笑いを返しながら断る私に、神谷さんは「うーん」と唸った。
何だか昨日から、神谷さんの雰囲気が違うように思う。
違和感……とでも言えばいいんだろうか。
いつも私の都合を気にかけてくれていた神谷さんが、今日に限って、妙に強引に思える。
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