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静まり返った玄関で、長瀬が先に口を開いた。
「なあ」
その声にハッとして、私は顔を伏せた。
少しムッとしたような声色の長瀬が、私に言う。
「おい、こっち向け」
「や、やだ!」
即座に拒絶した私に、溜息混じりの声が届く。
「ここで拒否んのかよ……いいから、こっち向けって」
「や、やだって……!」
顎を捕まえられて、無理矢理上げられた顔。
せめてもの抵抗として、目は逸らした。
「ミオ」
絶対、ぐちゃぐちゃな顔してるはずの私を、長瀬が呼ぶ。
その声があまりにも甘く優しくて、私はそっと伏せていた目を上げる。
まっすぐ、視線が繋がった、直後。
長瀬は、信じられないほどまっすぐ、私に言った。
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