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答えに詰まる私を見て、長瀬は溜息を吐いた。
「間違ってるってわかってた。……けど、あの時の俺にとっては、あれがお前を手に入れるための精一杯の策略だったんだよ」
「……」
言い切ると、少しだけ弱ったような表情を隠すように、髪をくしゃっと握った。
苦い顔をして目を逸らすから、私は逆に、その表情に釘付けになる。
私が抱えてきたのと同じくらい、長瀬も、私の知らない苦悩を背負ってきたんだろうか。
そう思うと、どうしてだろう。
私の中に、また新しい気持ちがわき上がってきた。
最初から、ずっと。
このオレサマの行動すべてが、私への気持ちに繋がっていたんだと、したら。
……言い様のない愛しさが、こみ上げてくるのを感じる。
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