1780人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
その事実が何だか悔しくて、「もうっ!」と不満げな声を漏らし、ばしっとその腕を叩いてやった。
甘さを纏っていた長瀬の顔が、意地悪く歪む。
「いてっ。あーあ、傷ついた。ミオのカラダで慰めてもらわねーとな」
「なっ!?」
一瞬だけしゅんとした空気を纏って、それから。
にやり、挑戦的な目を向けた長瀬が、そっと囁く。
「やさしくしてね、ミオ」
「やっ、何それちょっと待てえっ!」
「待たない」
そう言うが早いか、強く言い切った長瀬は私の手をひとまとめにした。
そんなことしなくても逃げない、けれど、自由が奪われるというのは何とも歯がゆい。
するり、私の頬を撫でた長瀬が言う。
「俺は待ったよ、じゅーぶん過ぎるほど、な」
「はあ!?」
ぞくぞく、と。
駆け上がる感覚に抗うように、私は声を張り上げる。
私の様子をじっと窺っている長瀬には、ただの強がりだって、お見通しなのかもしれない。
くっ、と笑った長瀬が顔を寄せる。
.
最初のコメントを投稿しよう!