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若いサンタが元気よく声をあげるここは、職場近くの安い居酒屋。
今日は職場の忘年会だ。
十二月第一週の週末という少し早めのそれは、あわよくば忘年会第二弾をと目論む連中の算段である。
こんな呑兵衛どーでもええから早よ帰りたいねんけど……。
盛り上がる同僚を横目に、一人隅っこで軟骨の唐揚げをツマミにビールを飲んでいると、やって来た人影にまた思わず溜め息が溢れる。
「山崎さーん、飲んでますかー?」
既に出来上がった様子の後輩、沖田くんだ。
また面倒なん来たでほんま……。
「まぁ」
「またまたーどうせ早く帰りたいなーとか思ってるんでしょー? わっかい彼女が家で待ってますもんねっ」
このこのっ、と輝く笑顔で俺に肘鉄を食らわすのは毎度のこと。
面倒なのはここからだ。
「狡いですよ……ひっく、私だって可愛い彼女が欲しいですっ。だってもうすぐクリスマスですよ? 独りぼっちとか寂しすぎますぅぇーん!」
無類の泣き上戸だから。
見た目は結構イケてやんのにそゆとこちょっと残念やねんな……。
まぁそれでも普段は懐いてくれる可愛い後輩だ。
「そのうち出来ますよ」
机に突っ伏して泣くその頭をぽんぽんと叩きつつ、俺は腕時計に目をやった。
まぁだ一時間かぁ……。
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