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適当に酔っ払いの相手をして、ようやくお開きの音頭がとられると、二次会に向かう連中に手を振って電車に乗った。
最寄りである茜台駅からマンションまでは徒歩約十五分。
冷たい風を受け歩いているうちにすっかりと酔いは覚めてしまった。
今の病院に勤めて早五年になる。
慣れた足どりで階段を上がると、二階の廊下に出てすぐにある我が家のドアを開けた。
「あ、お帰りなさーいっ」
間をおかずに響いた声に自然と頬が緩む。
リビングのドアからトタトタと駆けてくるのが俺の彼女、佐藤夕美(サトウユミ)だ。
付き合って一年。ここからの方が専門学校に通いやすいからと、半ば強引に押し掛けてきてもうすぐ九ヶ月になる。
一応、その時向こうの親には挨拶にも行った。
つまり、これは公認だったりする。
「ただいま」
「うわ、烝(ススム)さんお酒くさーい」
いつものように軽く唇を重ねると、途端にその目が据わる。
先月二十歳の誕生日を迎えたばかりの夕美は、いまだに酒に慣れないらしい。
背が低いこともあって、年齢以上に幼く見えるのが難点だ。
「これでもあんま飲んでへんねんで? 二次会も行かんと帰ってきたし。それよか今日は飯どしたん?」
「あ! 今日はね、香織さんのとこでご馳走になってきたよ!」
「……香織さん?」
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