夏祭りの夜

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二駅隣の町で行われるこの花火大会はそれなりに規模も大きく、毎年かなりの人で賑わっている、らしい。 実際足を運んだのは初めてだったが、確かに屋台も多く並び、花火の終了に合わせて立ち上がった人の波は、下手すれば怪我人すら出そうな勢いで。 「あっ」 「っ!?」 潰されぬようにと親に抱きあげられた小さな子どもから、かき氷をかけられたりする。 幸い夕美に着せられた俺の浴衣は濃紺。 既に溶けかけたその鮮やかなブルーの液体は二の腕から下を僅かに色濃くするだけですんだからまぁよし。 それどころか必死で謝る両親と、なくなったかき氷に泣き出した子どもに何故か逆に申し訳なさを覚えたほどだ。 小さな子どもを連れての外出は、何かと大変なのだろう。 そんな人混みに流されるようにしてようやく帰ってきた最寄り駅の茜台。 少し水分の蒸発した濡れた袖がベトベトと気持ち悪い。 「帰ったら洗面所で手洗いするから」 という夕美の言葉に従って。 汗だくで家に着いた俺たちは、とりあえず入ってすぐのそこへと直行した。 水が流れないように洗面台に詮をして浴衣を放り込むと勢いよく水を出す。 ついでに腕も流してすっきりだ。 「……なんなん?」 そんな俺の横では着替えてから洗うねと言いつつ、リビングに行こうともせずにただこっちを見て笑う夕美がいて。 「や、それ、可愛くて」 と俺を指差した。
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