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直後だ。
「烝さん? 何か凄いチャイム鳴ってたけど誰だったの?」
玄関のすぐ脇にあるドアから、濡れた髪を下ろした夕美が遠慮がちに顔を覗かせた。
まだ出たばかりなのだろう、ちらりと僅かに見える体にはバスタオルが一枚巻き付けられているだけ。
未だに初な反応を見せる夕美のそんな姿は珍しい。
が、思わず一瞬ドキリとした俺を見透かしたのか、突然大きく体を揺らした黒猫が、反動で触れた俺の腕におもいっきり爪を立てた。
「い゛っ!?」
「すす……っ、きゃ!?」
その痛みについ離した手。
くるりと軽やかに体を捩った黒猫は跳ねるように床を蹴ると、あろうことか今度は夕美に飛びかかっていった。
「ゆ……!」
パサッ
慌てて顔を向けた俺の目に、微かに聞な布の擦れる音と共に飛び込んできたのは、一糸纏わぬ夕美の姿で。
その横を掠めるようにして脱衣所からバスルームに跳ねていった黒猫と一瞬、目が合ったような気がした。
ナイス、猫。
「ーーっ、きゃー馬鹿ー!!」
「ちょ!?俺の所為っ!?」
茹で蛸よろしく真っ赤に染まった夕美がドアを閉め、籠城して暫く。
何故か怒られる羽目になった俺は、漸くバスルームにある換気用の小さな窓の網戸が破られているのに気が付いたのだった。
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