『4月10日』

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「次は……受験No.261、御陵 大智!」 「あ、はい!」 突然呼ばれたから一瞬キョドってしまった…… その事によって生じた照れを誤魔化しつつ、呼ばれた場所へと向かう。 その場所で俺を待っていたのは、グレーのタイトスーツに縁なしのメガネ、肩甲骨に掛かるくらいの茶色がかった髪の、三十路になるかならないかくらいの女性だった。 「失礼ですね、私はまだ28です」 「人の心を勝手に読まないでください、躑躅ヶ丘先生」 躑躅ヶ丘 紡妓。 2年生の学年主任。 四天王で言えば3番手くらい。 ……でも、四天王の3番手ってなんだか地味な感じだよな。 中弛みとか最後の前座とか、そういう位置にいるイメージが強いし。 「ラスボスの前に掃除されるような4番手が一番悲惨だと、私なんかは思いますが。 ほら、ラスボスの糧にされちゃったりなんかして」 「なるほど、一理ありますね……って。 だから勝手に人の心を読まないでくださいって」 おちおち考え事もできねぇ。 「と言われましても……私にとって生徒の心を読むのは天気を読むより容易いことですから……。 勝手に聞こえてくるといった方が正しいくらいです。 ですから、仕方ないでしょう?」 「仕方ないって……読まれるこっちの身にもなってくださいよ…… 大体、天気を読むのだってそんなに簡単なことじゃないでしょうに」 ニュースに出てるようなお天気キャスターだってわりとしょっちゅう外してるような気がするしな。 「善処はしますよ。 さてと、時間ですし、始めましょうか」 「あ、はい、よろしくお願いします」 一礼してデュエルディスクを装着し、デッキをセットする。 その一連の動作をお互いに終えたことを確認し合えば、あとは同時に宣言するだけ。 「では、これより受験No.216 御陵 大智の試験を開始します」 「よろしくお願いします」 「デュエル!」 御陵 大智vs.躑躅ヶ丘 紡妓――決闘開始
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