14人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
2,
「デュエルアカデミア」
俺や先輩、同級生その他もろもろが通っている学校の名前で、近年作り上げられたばかりの新しい学校だ。
ここでは、国語・数学・英語といった教科の並びに、ごく当たり前のように『決闘』という文字が存在する。
かつて一人の天才が考えたカードゲーム、『Magic&Wizards』。
それを大々的に取り上げ、『デュエルモンスターズ』という一大コンテンツへと昇華させた『海馬コーポレーション』。
その2つの力によって、政界・財界に並び立つ存在となった『カードゲーム界』……そこで活躍できる人材を育成するための教科で、デュエルアカデミアはその教科を重点的に教えるための学校だ。
学年的には高校生相当なのだが、実質としては『デュエルモンスターズの専門学校』というのが正しい。
……考えてみればすごい話だよな。
本来はただの子供の遊びだったはずのものが、いまや世界のバランスの一端を担う柱になっているのだから。
まあ、金の力は意外と色々可能にするっていう、夢も希望も身も蓋もないだけの話なのかもしれないが。
ともあれ、そういう事情で作られたデュエルアカデミア、その日本支部の1つは、現在年度始めに行われる実技試験の最中だ。
「……そういえば、なんで夜宵先輩は図書室にいたんだろう?」
今日は2年生の試験の日なので(なにぶん人数が多いので、学年毎に日が分けられるのだ)、3年生の夜宵先輩は本来登校してこなくても良いはず。
先輩が図書委員だったのは去年の話だし。
今年は(立候補さえすれば)図書委員長に当確らしいが、その選挙も来週だしな。
「……敵情視察、だったのか?」
立候補希望者は、あらかじめそれぞれ希望する委員会のホームに集まらなければならない、的な話があるのかもしれないし。
「……んなわけないか」
冷静に考えて、ただ単に図書室の本が読みたかったに決まってるじゃねぇか。
なんだよ、敵情視察って。
当確なら向かうところ敵なしだろ。
「……っと、あんまりのんびりしてられないか」
たまたま目に入った時計の針は、自分の番になる5分前の時間を指していた。
距離を考えればまだ間に合うとはいえ、ギリギリじゃ試験官の心証を悪くする危険性がある。
そんなわけで、小走りを挟みつつ、試験会場へと向かった。
最初のコメントを投稿しよう!