『4月10日』

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2, 「デュエルアカデミア」 俺や先輩、同級生その他もろもろが通っている学校の名前で、近年作り上げられたばかりの新しい学校だ。 ここでは、国語・数学・英語といった教科の並びに、ごく当たり前のように『決闘』という文字が存在する。 かつて一人の天才が考えたカードゲーム、『Magic&Wizards』。 それを大々的に取り上げ、『デュエルモンスターズ』という一大コンテンツへと昇華させた『海馬コーポレーション』。 その2つの力によって、政界・財界に並び立つ存在となった『カードゲーム界』……そこで活躍できる人材を育成するための教科で、デュエルアカデミアはその教科を重点的に教えるための学校だ。 学年的には高校生相当なのだが、実質としては『デュエルモンスターズの専門学校』というのが正しい。 ……考えてみればすごい話だよな。 本来はただの子供の遊びだったはずのものが、いまや世界のバランスの一端を担う柱になっているのだから。 まあ、金の力は意外と色々可能にするっていう、夢も希望も身も蓋もないだけの話なのかもしれないが。 ともあれ、そういう事情で作られたデュエルアカデミア、その日本支部の1つは、現在年度始めに行われる実技試験の最中だ。 「……そういえば、なんで夜宵先輩は図書室にいたんだろう?」 今日は2年生の試験の日なので(なにぶん人数が多いので、学年毎に日が分けられるのだ)、3年生の夜宵先輩は本来登校してこなくても良いはず。 先輩が図書委員だったのは去年の話だし。 今年は(立候補さえすれば)図書委員長に当確らしいが、その選挙も来週だしな。 「……敵情視察、だったのか?」 立候補希望者は、あらかじめそれぞれ希望する委員会のホームに集まらなければならない、的な話があるのかもしれないし。 「……んなわけないか」 冷静に考えて、ただ単に図書室の本が読みたかったに決まってるじゃねぇか。 なんだよ、敵情視察って。 当確なら向かうところ敵なしだろ。 「……っと、あんまりのんびりしてられないか」 たまたま目に入った時計の針は、自分の番になる5分前の時間を指していた。 距離を考えればまだ間に合うとはいえ、ギリギリじゃ試験官の心証を悪くする危険性がある。 そんなわけで、小走りを挟みつつ、試験会場へと向かった。
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