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春山先生が歩き出そうとすると、 更科くんが足を踏み出した。 「先生、俺も」 先生は更科くんの顔を じっと見て、 「車、回してくるから。 すぐ支度して降りて来て」 当然、ついて来てはだめだと 言うとばかり思った私は、 驚いて春山先生の顔を見た。 先生は、足元で見上げる 祐希の頭を優しく撫でてから、 車のキーとコートを手に、 リビングを出て行った。 更科くんが自分の上着を掴み、 その後に続く。 少し間を置いて、玄関のドアが 閉じられる音が響き、部屋の中は 唐突に静かになった。 後には、ぐつぐつと煮える 鍋の音だけが、寂しげに 取り残されていた。
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