人形の導き

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「はじめまして。私、イリス。イリス・アヴニールよ。よろしくね」 先程の涙はどこへやら‥‥ イリスは晴れ晴れとした笑顔でアレクに手を差し出す。アレクは戸惑いを隠せないまま、彼女と握手を交わした。 「よ、よろしく」 イリスはアレクの手を握り直し、真っ直ぐにアレクを見る。 「アレクにお願いがあるの」 アレクはそんな彼女に怯みながらも、目を逸らせずにいた。 「ある魔女を一緒に捕まえて欲しいの!」 イリスの表情は真剣そのもので、ふざけている様子はない。人形が話して動くのだから、魔女がいてもおかしくないーー そんな考えがアレクの頭を過る。 「その魔女の名前はギーラ。彼女は自分をーー」 「ねぇ、ちょっと確認していい?」 アレクはイリスの言葉を遮り、彼女をじっと見つめた。 「なあに?」 不思議そうに首を傾げている彼女にそっと近づき、肩に左手を優しく添えた。右手でゆっくりと彼女の頭を撫でる。 「ごめんね」 耳元で囁くように彼女に謝罪の言葉を口にした。そして、次の瞬間、アレクはイリスのーー  イリスの頭を精一杯、力の限り引っ張り上げる。彼女は再び悲鳴をあげた。 「い、痛いーー 痛いってばっ!!」 アレクはイリスに突き飛ばされ、尻餅をつく。イリスは、よっぽど痛かったのか、目に涙を浮かべながら頭を擦っていた。 「もう、何するのよ!?」 「ご、ごめん‥‥ 中に誰か入ってるのかなと思って……」 人形が話したり、動いたりするはずがないーー アレクには、魔女もイリスの存在も信じられなかった。 「中? 何言ってるの? それより、そこの杖を拾って。説明は後よ」 アレクは言われた通り、イリスの杖を拾い立ち上がった。 「ゆっくりと目を閉じて。そして、深呼吸」 何をするつもりなのか、アレクにはよくわからなかったが、とにかくイリスの言葉に従う。 「扉を思い浮かべるの。その扉は異世界へと繋がってる」 「異世界?」 「そう異世界ーーパラレルワールドーーもう一人の自分がいる世界。その扉を貴方は創造するの」 「想像?」 「創造よ。イメージ出来たら目を開けて、杖を振ってみて」 アレクは目を開け、杖を振った。 すると、なんと扉が出てきたのだ、アレクが想像していた通りの扉がーー 「さあ、行きましょう」 波打つ心臓を尻目に、差し出されたイリスの手を取る。そして、アレクは扉を開けた。
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