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「あの子だろ?この間一緒にいたのって……」
優弥の言葉にあの日の映像がフラッシュバックしてくる。
多分、優弥の言う"この間"というのはたまたま優子ちゃんと一緒に帰ったあの日の事。
久しぶりに美月の姿を……
声を……
聞いたあの日の事だと思った
「当たりか……。遠目で暗かったから良くは見えなかったからカマかけてみたんだ」
俺の反応に優弥は満足気に微かな笑みを漏らす。
「カマなんてかけなくても普通に聞けばいいだろ?」
あの日は話の流れで優子ちゃんと帰っただけで、それ以外の何でもない。
普通にお客と店のマスター以上の関係なんてあり得ないのだから。
「みたいだな。でも、ちょっと可愛がりすぎじゃね?」
俺たちのやり取りを見ていて納得はしていたようだが、引っかかるものを感じたようだ。
「そうか?たまに愚痴を聞いたりする程度で他の客と差はつけてないつもりだけど……」
これは本音だった。
お客のタイプによってだが普通に愚痴を聞いたりもする。現にサキちゃんや容子ちゃんのだって聞いた。
俺の中で優子ちゃんを特別扱いしているつもりなんて微塵もなく、優弥に指摘されることに驚きを隠せなかった。
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