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もしかして一方的な俺の言葉を信じ待ってくれている?
一瞬淡い期待を覚えたが、すぐに自分の中で打ち消す。
よくよく考えてみたら言葉も気持ちも俺から押し付けるように一方的に言ったにすぎない。
そしてそのまま美月には会わず、しばらくして家を出た俺を美月はどう思ったのだろう。
とりあえず家を出て自立したら大人になれると思っていたあの頃の俺。
今思えば、あれすら一人で空回りしているに過ぎなかったのかもしれない。
本当は傷ついた美月の側にいるべきだったのかもしれないと最近思うようになった。
でもあの時の俺は自分が側に居ることで美月をもっと傷つけそうで怖かった。
あの拒絶するような悲痛に歪んだ顔を思い出すだけでも背筋が冷たくなる。
俺は美月を守るためと言いながら、本当は美月に嫌われるのが怖くて逃げたのかもしれない。
時間が経ち傷は癒えるとは言うが身体とは違い心の傷はどのくらい経ては癒えるのだろう。
もしかしたら一生消えることはないのだろうか。
あの時の俺は美月の目にどんな風に映り、どんな風に思われていたのか知りたいと思うけど知るのが怖い。
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