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「別にもう過去のことだからいいよ。美月だって結構立ち直っているし」
さっきとは打って変わって俺を宥めるような穏やかな声。
その変化に戸惑っていると、掴んでいた腕から手を退かすように目で合図してきた。
「ただ知ってほしかった美月の苦しみを。美月はお前には知られたくなさそうだったけどな」
手を離すと、掴まれていたところが痛かったのか然り気無く擦りだす。
「それは俺が頼りないからか?それとも俺には関係ないことだって思っているからか?」
優弥の言葉すべてが俺の不安を掻き立てる。
やっぱり美月にとって俺は幾つになっても子供のままでしかないように感じられた。
普通ならそんな風に考えない……
自分でもひねくれていると分かっている……
でも無意識かな?
美月のことになると余裕も自信も、すべてどこかに飛んでいってしまう。
そして嫌だと言いながらも自ら"あの頃の俺"に戻ってしまう。
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