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「---美月に何かあったのか?」
不意に一抹の不安が横切る。
それなら急に優弥の行動が説明付くように思えた。
「どうしてそう思う?美月は元気だっただろ?」
意味深な笑みを浮かべながら俺に答えることなく更に問いかけてくる。
やっぱり答えは教えてはくれないらしい。
まるで猫のようにギリギリのところでスッとかわされてしまっている感じがする。
「元気だったな」
あの日の美月の姿を思い浮かべ呟くと優弥は少し複雑そうな笑みを漏らした。
---美月に何があった?
もう一度聞きそうになったが、どうせ優弥は答えてはくれない。
俺は聞く事を諦め、出かかった言葉をのみ込み、グッと気持ちを堪えた。
「知りたいなら自分で本人に聞けよ」
ポンと俺の肩を叩き、そのまま俺を残し人混みに消えて行ってしまった。
---俺の心の一筋の不安という闇を残して。
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