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「それはそうだけど……」
言い返せない自分が情けなく思いながら口ごもる。
「だから大丈夫だって言ってるのに。子供じゃないんだし」
心配そうに見つめる俺を美月は可笑しそうに笑う。
子供じゃないから心配なんだよ……
そう言いたかったけど俺はグッと堪え、心に留める。
「美月、お代りは?」
帰りの事もあるし飲ませ過ぎたくたくない気もするけど、俺の作ったお酒を美味しいと嬉しそうに言う美月の顔が見たいという矛盾。
「あ、今日はもう止めとく。明日も仕事だし……」
そう言いながら残り少ないお酒を飲み干してしまった。
こんなことなら優子ちゃんと一緒に帰らせれば良かったと今更ながら後悔した。
「本当は送っていきたいんだけど……」
「だからいいって。じゃあ、帰るね」
飽きもせず同じセリフしか言えない俺を美月は笑い、席を立つとドアの方へとゆっくりと移動しだす。
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