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「また、お店に行ってもいい?」---それは家の前まで送り、帰ろうとする俺に美月が言った言葉だった。
「いいよ、待ってる」
そう答えたけど美月が店に来る事はないと思っていたし、社交辞令だと思っていた。
それなのに何だ、この状況は---今、俺の目の前に美月がいるのだ。
今日は、あの日から3日後の金曜日。
時間は確か7時を少し回った頃だったと思う。
週末というのもあって時間帯の割には客が入り、やや忙しくしていると静かにドアが開いた。
「いらっしゃいませ」
忙しさを微塵も感じさせない笑顔で迎える俺の目に信じられない人が飛び込んできた。
こういう店に慣れていないのか、それとも1人で来て心細かったのか遠慮がちにドアの隙間から顔を覗かせ、俺の姿を捉えるとホッとしたように頬を緩ませる。
「来ちゃった」
驚く俺に駆け寄ると美月は少し恥ずかしそうに笑みを見せた。
冗談だと……
社交辞令だと思っていたのに本当に来るなんて思ってもいなかった。
「---いらっしゃい。本当に来たんだ」
あまりにも信じられなくて、つい口にしてしまったが、さすがに今の言い方は不味かったと自分でも思ってしまった。
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