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勿論、仕事に個人的な感情を持ち込むのは駄目だと分っている。
それでも雨のせいかな……
妙に気持ちが憂鬱で、どうしようもなく寂しさとやるせなさが募る。
駄目だ、駄目だ、と自分に言い聞かせ思い直していると、それを悟ったかのように店のドアが開いた。
「---いらっしゃいませ」
ドアが開いた瞬間、店の中に激雨が入り込み、同時に激しい風の音が俺の声を掻き消す。
そしてドアの傍には風で髪が乱れ、ずぶぬれの女の子が1人俯き加減で立ち尽くしていた。
「大丈夫!?」
一瞬、俯いていてソレが誰だか分からなかったが、すぐに優子ちゃんだと気づき、慌ててタオルを片手に歩み寄る。
でも優子ちゃんは俺の声にも全く反応する様子もなく、俯いたままで前髪からポタリポタリと滴を落とす。
「傘は?忘れてきたの?身体冷えてるし」
全く答えようとしない優子ちゃんを気にしつつも、俺はしきりに話しかけ濡れた頭を拭いてやる。
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