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こんな風にすがるように抱きつかれたら、さすがに拒む事ができない。
それどころか、ほんの少しこうしているだけで優子ちゃんの気持ちが和らぐのなら、と震える優子ちゃんを慰めるように優しく抱きしめた。
さすがに優子ちゃんも驚いたらしく、一瞬身体をビクつかせ強張らせた。
でも、すぐに身体の強張りは解れ、額を俺の胸に強く押しつけしがみついてきた。
静まり返った店内に時々、鼻を啜る音が響く。
でも必死に堪えているのか声だけは洩らさない。
それが余計に見ていて辛くなり、自然と優子ちゃんを抱きしめる腕に力がこもる。
何があったかなんて分らないが、大体の察しはつく。
よほど辛い事があったのか、なかなか泣き止まない優子ちゃんに考えたくはないが最悪な結末を想像してしまった。
どうしたら泣き止んでくれるだろう……
どうしたら優子ちゃんの苦しみを和らげてあげることができるだろう……
優子ちゃんを抱きしめながら、そんな事ばかり考えていた。
そんな時、間の悪い事に店のドアが開く音がした。
そんな間もなかったが、店を締めておけば良かったと後悔しつつ、ドアの方に目線を移した。
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