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瞬間。
俺の目は、その人物に釘付けになってしまった。
まさか、このタイミングで……
あまりのタイミングの悪さに、できるなら夢であって欲しいと思ってしまった。
そう。今、店に入ってきたのは俺がずっと待っていた相手で、そして一番見られたくはない相手だった。
そして今の俺は誰が見ても誤解されても可笑しくない状況。
案の定、美月は俺たちを見て誤解しているのが手に取るように分かる。
とはいえ、泣いている優子ちゃんを無理やり引き離して言い訳なんて出来ない。
「――神崎さん?」
俺の微かな変化に気づいたのか、ずっと俺の胸に顔を埋めていた優子ちゃんが躊躇いがちに顔を上げる。
「何でもないよ」
――やっぱり放っておけない。
迷いをふり切るかのように俺は美月から目を逸らし、優子ちゃんに視線を落とす。
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