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「ごめん、ちょっと場所に迷っちゃった」
そう言って約束の時間に少し遅れて美月が慌ただしく店に入ってきた。
「電話くれたらいいのに……」
少し格好つけたくて店を指定したのは俺で、こんな時くらい少しは頼ってほしいって思ってしまった。
「うん。焦り過ぎて電話するってこと自体、頭からスッポリと抜けてた」
恥ずかしそうに言う様子から、その言葉に嘘はないみたいだった。
「すごく雰囲気のいい店だね。こんな店があったなんて知らなかった」
メニューを広げる俺をよそに、興味津々の顔で店内を見渡す美月。
「最近は来てなかったけど、たまに来るんだ。何かしっくりくるっていうか、落ち着くんだ」
ほんの少し照明は落とされ、テーブルには小さなキャンドル。
店内にはバーカウンターがあり、お酒も美味しいしフードメニューも割と充実していて、しかも美味い。
殆どがカップルでちょっと隠れ家的デートスポットっぽく、いつか美月と来れたらいいなと思っていただけに、それが実現できて内心かなり気持ちが盛り上がってしまっていた。
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